■設計主旨
一人の世界に入りたい。お友達と遊びたい。こどもの心は揺れ動きます。この巾広い心の動きをしっかりと包み込める建築として、守られた小さな部屋から、心が広がる大らか部屋まで、多様な空間が集った幼稚園をめざしました。
外観は、個性ある「家々」がひとつに寄り集まった集落のような姿をイメージしました。その「家」の一つである保育室の中に入ると、一つながりでありながら、天井の変化によっていくつもの部屋が集まったようにも感じられます。赤い壁の小さな部屋では、守られた中で自分の世界に入り込むことができます。
もうひとつの「家」である遊戯室は対照的に、正方形という安定した形の上に中心が高い大きな屋根がのり、自ずと一体感が感じられるようにしました。この2つの「家」の間に建つ八角形のトイレは、肌にここちよい色合いの空間を木の屋根がこっぽりと包み込み、気持ちの落ち着く部屋になっています。
これらの特徴ある「家々」が五角形の中庭に沿って並び、ぐるりと廻る庇が結びつけています。異なる特徴がともにあることの面白さや豊かさが感じられればと考えました。
個性の違う「家々」がともに集うこの建築の中で、こどもたちが心を自由に羽ばたかせ、ともにいることの歓びが深まっていければと願っています。
■園庭について
建築と同じく、園庭においても、性格の違ういろいろな庭をつくりたいと考えました。
保育室と遊戯室をV字型に配置することで、南東と南西に二つの大きさの異なる園庭を生み出しました。中庭も三番目の園庭として、こどもたちの遊び場となります。道路から見ると、形の異なる保育室、八角形の幼児トイレ、遊戯室が次々と登場します。
「みんなちがって、みんないい」(金子みすず詩) 。そして「一緒にあるのでさらにいい」と感じられればと願っています。