設計主旨
【Ⅰ. 都市」としての神学校 】
神学校は一つの「まち」、一つの 「都市」ではないでしょうか。そこでは「祈る」「学ぶ」「仕事をする」「食べる」「寝る」という様々な営みが展開します。神学生の24時間 3年間を包む場でもあります。都市において関連した営み・機能が 集まり、他と適切な距離を保つことで混沌を防ぐように、この計画でも各機能を整理し配置することが大切です。同時に、異なる 機能どうしの間に、望ましい結びつきが自ずと生まれてほしいものです。「適切に分け、適切に結 ぶこと」。その担い手として「十字に交わる2つの道」を提案します。
【Ⅱ. 十字に交わる2つの道】
2つのうち1つは、東西を結ぶ水平で巾広い道=AVENUE。もう1つは南北を結ぶ坂道=HILL-ROADです。
AVENUEは各機能を貫き結びつける「動脈」で、各空間の入口はすべてこの通りに面し、1日の営みはこの通りを中心に展開します。
一方、HILL−ROADは、敷地の高低差を生かし、階の違う男子寮女子寮 というプライベートな生活空間へと向かう階段状の小道です。
【Ⅲ. 十字路が生み出す領域】
交差する2つの道が生み出す領域を生かして、各部門、各機能を配置します。
a. 十字路の、HILL-ROADより東を「活動」領域、西を「生活」領域と位置づけます。
・十字路の東南に「図書館」、東北に「管理」部門を配置します。
・十字路の西南には、1階に校長宅等、2階に舎監室、北西に 食堂を配置します。
b. 十字路から離れたAVENUEの東端を、「聖域」と位置づけ礼拝堂と教室群を配置します。
【Ⅳ. 周辺環境との調和】
周辺(特に北側隣接住宅)が享受している海への眺望を極力壊さないように計画を2階建てにとどめます。坂の下から見て立ちはだかるような圧迫感がないように、浜から山へとセットバックした断面形状にします。
【Ⅴ. 大地に刻まれた十字の空間】
十字の道は空から見ると、建物に穿たれた十字となります。この穿たれた十字の空間こそがこの神学校の活動を支える基盤といえます。十字に支えられた世界を内に包み込み外には調和的な佇まいをもつ神学校建築を提案します。